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会場にネット環境がないときのライブ配信回線の選び方と、「上り20Mbps」の目安
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セミナーや式典をオンラインでも配信したい。ところが、会場に配信に使えるネット回線がない。ホールや公共施設では、珍しくないことです。
配信の映像や音声がどれだけきれいでも、回線が途切れれば、視聴者には何も届きません。ライブ配信では、回線の確保がいちばんの土台です。
この記事では、イベントの配信を手がけるデプスが、会場にネット環境がない場合の回線の選び方と、実際の現場での考え方を解説します。
01配信で大事なのは「上り」の速さと安定性
インターネットの速さには、「下り」と「上り」があります。下りは、動画を見たり、ページを開いたりするときの速さ。上りは、こちらからデータを送り出すときの速さです。
ライブ配信では、会場の映像と音声を、インターネットへ送り出し続けます。そのため、配信で大事なのは「上り」の速さです。普段の使い方では下りの速さが注目されがちですが、下りが速くても、上りが遅かったり不安定だったりすれば、配信は安定しません。
デプスが回線を選ぶときの目安
上り 20Mbps 以上
これは、デプスが現場で回線を選ぶときに使っている、実務上の目安です。実際に必要な速さは、配信の画質(解像度やビットレート)、配信先のサービス、同じ回線で同時に使うほかの通信などによって変わります。
なぜ上り20Mbps以上を目安にしているのか
デプスでは、フルHD(1920×1080)のライブ配信を行う際、実測の上り速度20Mbps以上を一つの目安としています。配信機材や画質の設定によって異なりますが、実際の現場では、映像のビットレートを5,000〜8,000kbps程度に設定することがあります。
例えば、映像8,000kbps、音声160kbpsで配信する場合の計算は、次のとおりです。
- 映像
- 8,000kbps
- 音声
- 160kbps
- 送信するデータ量(合計)
- 約8.16Mbps
- 上り20Mbpsに占める割合
- 約41%
- 残りの余裕
- 約59%
※ 映像と音声のデータ量だけで計算した、計算上の目安です。実際の通信には、通信の制御に使うデータなどが加わります。
ライブ配信では、通信速度が常に一定とは限りません。特にモバイル回線では、利用者の集中や電波環境などによって、速度が大きく変動することがあります。そのため、配信に必要な最低限の速度ではなく、ある程度の余裕を持った回線を確保することが重要です。上り20Mbpsは、この余裕を見込んだ目安です。
ただし、20Mbps以上であれば必ず安定する、20Mbps未満では配信できない、という意味ではありません。大事なのは、速度測定で一瞬出た数字ではなく、本番を通して、配信に必要な通信帯域を安定して確保できるかどうかです。デプスでは、回線の速さだけでなく、通信の安定性や予備の回線の確保も重視しています。
CALCULATOR配信の設定から、必要な上り速度を計算するライブ配信・上り回線速度計算(Numlino)02第一の候補は、会場まで光回線を通すこと
配信(中継)がある場合、デプスがまず検討するのは、会場まで実際に光回線を通すことです。条件が整えば、モバイル回線に比べて、安定した上りの速さを得やすい、有力な選択肢です。
区民ホールや県民ホールなどの公共の会場でも、「回線工事をしてくれればよい」というホールがあります。会場の許可が取れる場合は、当日の安全性を考えて、回線を通します。
ただし、光回線であれば必ず安定する、というわけではありません。その回線を配信だけで使えるのか、ほかの利用者と共有するのか、会場の中のネットワークがどうつながっているのか、利用の条件や制限があるか、といった点で、実際の通信の質は変わります。光回線を使う場合も、こうした条件を事前に確認します。
また、回線工事には、会場の許可と、工事の手配が必要です。当日の直前では間に合わないため、配信をすることが決まったら、早めにご相談ください。
03光回線が使えない場合は、複数のモバイル回線を活用する
回線工事ができない会場では、モバイル回線を使います。ただし、スマートフォンと同じように1本の回線だけを使うのではなく、専用の機器とサービスを使って、ドコモ・au・ソフトバンクの3社の回線を同時に活用します。
複数の回線を使うことで、1社の回線だけに頼らずに済み、どれか1つの回線が混んだり弱くなったりしても、ほかの回線で補いやすくなります。ただし、複数の回線を使えば、その分だけ速さが単純に足し算されるわけではありません。効果は、使う機器やサービス、設定、その場の回線の状態によって変わります。
デプスでは、配信先や用途に合わせて、次の2つの機器を使い分けています。
VIDEO TRANSMISSION
LiveU(ライブユー)
複数のモバイル回線を活用して、映像を安定して伝送するための機器・サービスです。デプスでは、YouTube Liveなどへのライブ配信に利用しています。
NETWORK
Peplink(ペップリンク)
複数の回線を活用して、ネットワークを作るための機器です。パソコンなどのインターネット回線として使えるため、デプスでは、Zoomで配信する場合などに使っています。
Zoomで配信する場合
Zoomでは、パソコンなどからミーティングやウェビナーに参加して、映像を送ります。そのため、デプスでは、Zoomで配信する場合は、インターネット回線として使えるPeplinkを選んでいます。
このように、回線の確保の方法は、配信先のサービスによっても変わります。ご相談の際は、YouTube・Zoomなど、使う予定の配信先もお知らせください。
機器は、通信状態のよい場所に置く
モバイル回線を使う機器も、電波が届きにくい場所では力を発揮できません。ホールの中は、壁に囲まれて電波が弱くなりやすいうえに、来場者のスマートフォンも集まる場所です。そのためデプスでは、現場で電波状況を確認し、必要に応じてケーブルを延長するなどして、窓際や屋外に近い場所など、通信状態のよい位置に機器を設置します。
04周りに遮るものがない場所では、衛星回線も
郊外や地方などで、光回線もモバイル回線も確保しにくい場所では、Starlink(スターリンク)などの衛星回線が有力な選択肢になります。
ただし、衛星回線も、必ず安定するわけではありません。空の見通しや設置場所によって通信の状態が変わり、上りの速さは下りより遅くなるのが一般的です。速さの変動や、一時的な通信の途切れが起きることもあります。
そのためデプスでは、衛星回線を使うかどうかは慎重に判断します。設置する場所で実際の上りの速さを確かめ、必要な配信の画質を、本番を通して保てるかどうかで判断します。
05本番の配信を、1本のモバイル回線だけに頼らない
手軽な方法として、ポケットWi-Fi(モバイルWi-Fiルーター)を思い浮かべる方も多いかもしれません。問題は機器の形ではなく、1本のモバイル回線だけに頼ることにあります。
1本のモバイル回線は、その場の電波の状況や、基地局の混み具合によって、速さが変わります。来場者が多い会場では、時間帯によって速さが大きく変わることもあり、1本だけでは、速さが落ちたときに補う手段がありません。そのためデプスでは、来場者のいる本番の配信を、1本のモバイル回線だけに頼らない方針にしています。
来場者がいない配信の場合
一方、スタッフだけで行う配信など、会場に来場者がいない現場では、回線が混み合う心配は小さくなります。このような場合は、ポケットWi-Fiなどの手軽な回線も選択肢に入ります。どの回線にするかは、それぞれの安定性と費用、起こりうるリスクをご説明したうえで、ご相談して決めます。
06会場のフリーWi-Fiは、本番の回線にしない
ご相談の中で意外と多いのが、「会場にフリーWi-Fiがあります」というケースです。実際に、フリーWi-Fiでも速い会場はあります。
ただ、来場者向けのフリーWi-Fiは、ほかの利用者と共有する回線で、通信量や接続時間などの制限がある場合もあります。一度測った速さが、本番中もそのまま保たれるとは限りません。利用する場合は、会場のネットワークの環境や、利用の条件を確認する必要があります。
そのためデプスでは、本番の配信を、来場者向けのフリーWi-Fiだけに頼ることはしません。本番の回線にはLiveUなどの機器を別に用意し、フリーWi-Fiは、予備として使えるだけの品質があるかを確かめたうえで、予備として使います。
07担当者が事前に確認しておきたいこと
配信をすることが決まったら、次の点を早めに確認しておくと、回線の準備がスムーズです。
- 会場に、配信に使える有線のネット回線があるか。ある場合は、利用の条件や制限(配信だけで使えるか、ほかの利用者と共有か)
- 会場が、回線工事を許可しているか
- 会場にフリーWi-Fiがあるか(ある場合も、予備として使えるかを確認する)
- 配信先のサービス(YouTube・Zoomなど)と、配信の画質
- 来場者のおおよその人数と、屋外・郊外の会場の場合は、空の見通しや周りの遮るもの
- 実際に配信する機材で、通信テストができるか(できれば、本番に近い時間帯に)
- 予備の回線があるか、ある場合はどう切り替えるか
分からない項目があっても、会場名が分かれば、確認の進め方からご相談できます。特に回線工事が必要な場合は、準備に時間がかかるため、早めのご相談をおすすめします。
SUMMARY
まとめ|配信の回線は、「本番を通して上りの速さを保てるか」で選ぶ
- 配信で大事なのは「上り」の速さと安定性。デプスは、上り20Mbps以上を実務上の目安にしている
- 第一の候補は、会場まで光回線を通すこと。ただし、共有か専用か、会場の構成や利用条件も確認する
- 光回線が使えない場合は、専用の機器とサービスで複数のモバイル回線を活用し、1社の回線だけに頼らないようにする
- 衛星回線は、光回線やモバイル回線が難しい場所で有力な選択肢。設置場所で実際の速さを確かめて判断する
- 来場者のいる本番の配信は、ポケットWi-Fiなど1本のモバイル回線だけに頼らない
- 会場のフリーWi-Fiは、本番の回線にはせず、品質を確かめたうえで予備として使う